眠れない夜に

雨は上がり湿った風が窓から流れ込む。

眠れない真夜中。煙草を吸い吐いた煙を風に流す。

トランペット奏者リーモーガンのアルバムをかける。ハードバップジャズに軽快なロックのリズムが融合した名盤だ。

胸が痛い。心臓がノミで削がれるような痛みだ。痛い、痛い、と心が唸ってるようにも感じられる。理由が分からない。思い当たる事など何もない、はず。

考えることを止めトランペットの音に耳を傾ける。この音は今夜の胸をなんとも心地よくさする。

今日から連休が始まり明日は横浜の子どもたちの元に向かう。

娘たちからlineで何時にこっちに着くの?と楽しみにしているような連絡が届いた。もちろんぼくも楽しみだ。

できるなら最高の笑顔で会いたい。寝不足で疲れた姿など見せたくない。

子どもたちのことを想う。毎日想う。少しでも喜んで欲しい、健やかであって欲しい、少なくとも愛されてることを全身で感じ、自分自身を愛して欲しい。

ぼくは影をまとってる。ネガティブな考え癖や沈鬱が沁みついてる。しかし、そんなもので子供の心を汚したくない。

愛するとはどんなことかぼくには分からない。愛し方だって分からない。いとおしい思いで胸は張り裂けそうなのに、それをどう表し、どう伝えて良いかもわからない。

それでもぼくは決めた。それができる、できないなど気にしない。何年か前に決めたのだ。

何があっても、どんな状況であろうと、そこに光をみつける。光に向かう。心の差す方向へ意識を向ける。そして幸せでいる。絶対に、絶対に

今は大学3年生の三女が高1の時の誕生日にぼくに告げた。

今、わたしは友達に恵まれ、先生に恵まれ、学校に恵まれ、何より家族に恵まれてる。お父さん、お母さんに愛されて育ったと実感してる。本当に毎日が楽しいの。

でも、お父さんはどうなの?私にとって世界一のお父さん。お父さんが幸せじゃなきゃ私は悲しくてたまらない

そう言ったかと思うと大粒の涙を流しぼくを見つめた。

どうしてお父さんは苦しむの?どうしたらいいの?私にできることがあったら教えて

ぼくは笑って

ぼくの願いはお前たちが幸せでいること、それだけだ。他は何もいらない。なにひとつ

じゃあ、私が幸せを望むならお父さんが幸せでいて。幸せを感じて

その夜の帰りの車中は涙で前が見えなかった。ハンドルも涙に濡れどうしようもない。そしてひとりの部屋に戻って誓った。

何があっても、どんなことがあっても、ぼくは幸せでいる

それからぼくは自分の幸せについて本気で探した。

それから精神世界の書物をたくさん読んだ。

エックハルトトールのニューアース、ニールドナルドウォルシュの神との対話シリーズ、パウロコエーリョの数の書物、バシャールなど、ぼくの探していた言葉や漠然と感じていたことそのもがそのまま綴られていた。

心を深く突き刺す概念、探していた言葉、求めていた答え。

学んでは失敗し、また学んでは忘れ元の木阿弥。

それでもまたやり直す。

心を整え、心の声を聞き続け、瞑想し、祈り、願い、あきらめ、探求し、闇に取りつかれ、鬱に沈み、叫び、再び心をみつめる。

繰り返し、繰り返し、続けること。あきらめないこと。

どんな状況でも、何が起きようと、あるいは何を失い、深く傷つことうと、ぼくはそこから光をみつける。そこから学ぶ。

ポジティブな何かを。絶望しようと鬱に沈もうと、関係ない。誰が何を言おうと気にしない。幸せでいる。笑っている。泣いても必ず笑う。転んでも絶対に立ち上がる。絶対に、絶対に、絶対に

なぜならぼくは子供たちを愛してるから。

愛しているという意味が分からなくても、たまらなくいとおしく、命よりずっと大切で、どうししたらいいか分からないほど、幸せでいて欲しい。

その子供たちを悲しめ、傷つけることだけは絶対にしない。地獄に落ちようとそれだけは全身全霊傾けしない。

ぼくが幸せでいることが一番の望みなら、ぼくは幸せでいよう。

だから、今夜も深い闇が心を襲おうと、気にしない。

眠れずネガティブの渦が目の前でとぐろを巻こうと恐れない。

それがどうしたというのだ。静かにそれを感じきろう。痛みは感じきったら消える。

心に青い空を浮かべその風を感じる。星のきらめきを思う。木のざわめきを聞く。

そして告げる。静かに味わえ。今は今のときを。この瞬間を。

音楽は止んだ。すると鈴虫や蛙の鳴き声が聞こえる。風は柔らかい。草の匂いが漂う。じっとそれを味わっていよう。何も考えず、何もまどわず、目を瞑りそれを感じていよう。

すると、どうだろう、もうこんなに幸せに包まれている。

ぼくはここにいる。この美しい星に。

ただここに。それだけで十分に幸せだとようやく思い出した。

感謝します。

ようやく眠りに就けそうだ。安らかで幸福な眠りに。

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